じいちゃんのたからもの
僕は母親を早くに亡くし、以来僕の父は再婚もせずに一人暮らしをしている。
今日はその父の宝物のお話。
僕がまだ東京にいた頃。5年ほど前の事だ。
その頃、年末年始は親父の家に帰省していた。
東京から大阪への帰省。もちろん家族全員で。
当時は下の子が生まれていなかったので、僕と奥さんと3歳の子供一人。
基本的には車で帰省しており、5年前は年越しだけ東京でやって、1月2日位から大阪に帰省するスケジュール。なので、お正月に親父の家にお邪魔。
ある日親父が買ってきたでっかいテレビ
帰省する少し前のこと。親父と電話をしていた時に、でっかいテレビを買ったと報告があった。
60インチあるらしい。
おー、それはすごいなぁ。じゃあそっち帰ったらでっかいテレビが見れるんやぁ。
と感心。しかも2.1chのスピーカーもついているとのこと。
今では60インチでも割りと買えるような値段になってきたけど、5年前はそれでもそこそこ高かった大型テレビ。
なお、当時はうちは中古で買った42インチのテレビ。それでも結構大きいと思っていたから、60インチってどんだけでかいんだろうなと想像してた。
自慢の大型テレビ 子供には関係ない
その年、帰省して親父の家について、リビングに入ったらそりゃもうすごい存在感アピール。やっぱ60インチってデカいw
僕も奥さんもびっくり。
でも3歳の娘は関係なし。画面の大きさよりも、消えている画面に映りこんでいる自分に大はしゃぎw
そんなこんなでお話をして、ご飯を食べて帰省終了。
お盆に自分だけで帰省
それから8か月が過ぎ、お盆に入りました。
お盆休みは取れたものの、奥さんの体調の都合で僕一人で大阪に帰省しました。
数日間一緒に過ごす親父。一緒にでかけたり、おうちで軽くお酒を飲んだり。
すると親父が嬉しそうに
「そういえば、これ見てみ」
と言ってテレビを指さしてきました。
僕は何だろうと思ってテレビをみるけど、そこにあるのは何の変哲もない60インチのテレビ。
何か周辺機器でも取り付けたのかと思ってよく見ても特に何も変わっていない。
「何?なんかつけたん?」
と僕が聞いても親父は「ちゃうちゃう、ここやここ」と画面の隅のほうを指さします。
まさか人の顔でも映ってるのかとよく見る。。。すると・・・
そこには小さな手形が。。。
「みーちゃん(娘の名前)の手やw」
「あー、いつの間に・・・」
「年始やろなぁ。そん時しか来てないんやから」
「そっか、ごめんごめん。え?今キレイにしよか?」
「えーえー、そのままでええねん。たまにその手形みてみーちゃんのこと思い出すねん。元気やったなぁて」
「そうなんやw」
買ったばかりのテレビに娘が思い切り手形をつけていたらしい。そう言われるとくっきり残ってる。
ほぼ新品のテレビだからよくわかること。
家のテレビでやられると「もー」と言って普通に拭き取るようなことだけど、一人暮らしの親父にとっては孫の痕跡がうれしかったらしい。
年二回帰ってきているとはいえ、普段はずっと一人で過ごしている親父。そりゃさみしいか。
そこから4か月が経ちました
それから4か月。娘も4歳になり、また年末年始を大阪で過ごすため家族で帰省。
今回は年越しも一緒に大阪で過ごすことができるようになり、12月の30日位に帰省。
年末のバタバタもあり、年越しの用意とかも手伝って一緒に年越しをすることに。
大掃除も手伝って、しめ縄もしめて、お餅もお酒も買って、年越し。
年が明けてから新年のご挨拶。娘はお年玉をもらって、よくわからないままじいじにありがとうとお礼を言っていました。
そんな中、ちょっと親父が寂しそうな雰囲気。
「どないしたん?」と聞くも「ん?なんもないで?」と返ってきます。
やっぱり東京に帰ってしまうのが寂しいのかなと思って何気なくテレビを見たら・・・
あれ?
ない。
手形がない。
僕 「あれ?」
奥さん「どうしたの?なんか探し物?」
僕 「いや、ここ、みーの手形ついてなかった?」
奥さん「あーついてた。バッチリついてたね。もうあの子いつの間につけたのか…」
僕 「あ、もしかして…」
奥さん「あれ?まだ残ってた?もう一回綺麗ににするね。」
僕 「いや、そうじゃないねん。あー、そっか。大掃除…」
親父 「ええよ」
じいちゃんのたからもの
それから4年。4歳だった娘も今は8歳になり、さらに今は下に3歳の妹もいます。
親父は今も元気です。今も一人暮らしをしていますが、のんびり過ごしているそう。
僕?
僕は今は大阪に住んでいます。親父の家から車で5分くらいのところ。
月に2回くらいは家族全員で親父の家に遊びに行きます。もう親父は二人の孫にデレデレです。
確かに手形はなくなってしまったけど、1年前に大阪に引っ越してきて、昔と違ってすぐに孫に会えるのがうれしくてしょうがないみたいです。
僕も親の顔がすぐに見れるのはうれしい。
僕が娘を自分の命よりも大切な宝物と思うのと同じように、きっと親父も僕のことをそういう風に思っていてくれたのでしょう。
そして、僕が独り立ちして、奥さんを見つけてきて、孫を二人連れて帰ってきたら、あとの愛情は孫にまっしぐらですw
4年前はテレビについた手形でさえも、宝物のように感じていた親父。
でもやっぱり、孫本人の笑顔が一番のようで。
元気なうちにいっぱい親孝行をしていこうとおもう今日この頃。
ごめんね?ただの日記だよ?